ジョン・ポールソンといえば、世界の金融市場を震撼させた2008年の「リーマンショック」を予測し、多くの投資家が損失を記録するなかで巨万の富を築いた伝説の投資家です。「史上最大の逆張り」ともいえる大博打のような手法から、投資初心者が学べるものはあるのでしょうか。
ジョン・ポールソンとは何者か?

1955年12月14日生まれのジョン・ポールソンは、アメリカのヘッジファンドマネージャーとして知られています。ニューヨーク大学経営学部、ハーバード大学で学び、ハーバード大学在学中には、ゴールドマンサックスの奨学金でMBAを取得しています。卒業後はボストンコンサルティンググループに勤め、1994年に、ポールソン・アンド・カンパニーを創業しました。
ンの名前が世界に知られるようになったのは「リーマンショック」です。アメリカ合衆国で起きた、住宅市場の悪化によるサブプライム住宅ローン危機をきっかけに、投資銀行のリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが破綻。そこから世界の金融が危機に陥りました。日本の各企業も大きな影響を受け、日経平均株価が2008年9月12日の終値1万2,214円から、10月28日には6,994円 まで下落するなどしました。また、多くの企業が経営悪化から派遣社員との契約を打ち切る方針を打ち出し「派遣切り」問題が発生しました。
さて、リーマンショックで世界中の企業や投資家が大きな損失を出す中でジョン・ポールソンは150億ドルもの利益をたたき出します。彼はなぜ、多くの投資家を出し抜き、大稼ぎをすることができたのでしょうか。

ジョンが行ったのは、かんたんにいうと「逆張り」です。リーマンショックが発生する前までのアメリカはかなりの好景気で、いわゆる「バブル」が続いていました。日本でもバブル期に土地や住宅の価格が跳ね上がったのと同様にアメリカでも不動産の価格が上がり続けており、国民は自寸たちの収入に見合わない価格の住宅を、ローンで組んで購入していました。そして、バブル真っただ中で金融機関も、返済能力をよく見極めることなく多くのローン審査を通し続けました。つまり、サブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)です。
ジョンが目を付けたのはそのバブル期の熱狂です。債券CDSを空売りすることで莫大な利益を上げることに成功したのです。債券CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)とは、企業の信用リスクを取引するという内容の金融派生商品です。個別銘柄の株価を見て売買する投資家にはほとんど無縁の商品といえます。
多くの投資家や金融機関はバブルがまだ続くと信用取引を続けていましたが、一方のジョンは、アメリカが空前のバブル期にあり近くバブルが弾けることを冷静に感じ取り、CDSを空売りすることで150億ドルもの利益を上げることに成功したのです。
また、CDSの空売りだけでなく、債券等の格付けである「投資適格」を見き分け割安な債権を大量に購入したり、金融系、不動産系の商品も積極的に購入したりしていきました。そして、リーマンショックにより国の介入を見越して金にも投資するなど、政策や市場動向の先を読みながら利益を上げ続けました。
投資初心者がジョン・ポールソンから学べること
ジョンの成功の1つは、バブル崩壊を予測していたことでしょう。CDSの空売りという手法は普通の投資家は到底マネできませんが、好景気の中で金融・不動産の勢いを感じながらも、そのバブルがいつか弾けることを見越していたのは常に市場動向を予測していないとできることではありません。
投資初心者としては、景気に踊らされないことの大切さがポイントになると思います。好景気の業界の銘柄を買うのは必ずしも間違っているとは言えませんが、高騰した商品を「高値掴み」してしまう可能性があります。「みんなが買っているから」「人気の商品だから」というだけで買うのは危険です。将来性や、自身が本当に保有したい商品なのか、現在の自分のポートフォリオを考適切なのか、購入するだけの余剰資金はあるのか、などをよく考えてから購入するか判断したいところです。
国の政策をよく見極めることが重要
また、ジョンのもう1つの成功は、国の金融政策をよく見極めていたことにもあるといえそうです。バブルが弾けリーマンショックにより世界経済が危機に陥るなか、アメリカ政府がどのような政策を打ち出すか「先の先」まで考え、投資戦略を練ったうえでの積極的な売買が功を奏しました。
投資初心者はここから学べることもありそうです。国がこれからどのような政策を打ち出すのか、日本国内における少子高齢化やインバウンド事業が今後どのように進むかなどをリサーチすることで、自身の投資戦略も変わってきそうです。昨今ではAI、ChatGPT、在宅ワークなどでしょうか。
栄光は長く続かず。しかし今も再起を目指す

世界経済が危機に陥るなかで大きな利益を出し、その名をとどろかせたジョンですが、その葉事業も私生活も芳しくありませんでした。投資に失敗し、一時期は400億ドルに届くといわれることもあった資産は100億ドルを切ったとされています。また、プライベートでも離婚を経験し、その慰謝料も莫大なものになったようです。しかし彼は今もまだヘッジファンドマネージャーとして、虎視眈々と大逆転を狙っているようです。
初心者が学ぶ点が多いがマネするのは高リスク
ジョンから学ぶ点は多々あります。それは、投資初心者だけでなく、投資家であればだれでも参考になるでしょう。ジョンの現在の状況はどうであれ、一時は150億ドルもの利益をたたき出し、世界に名をとどろかせた投資家であることは間違いありません。
とはいえ、投資初心者がCDSの空売りに手を出したり、逆張りをメインにしたり投資をするのはオススメしません。ハイリターンの期待はあるとはいえ、空売りのリスクはもちろん、そもそもの意味さえもろくに理解しないうちに商品を購入するなどはもってのほかです。
まずは少額でコツコツと、攻め手自分が理解した商品や知っている企業の株式を購入するなどから始めるのが良いでしょう。それでもどうしても逆張りのような投資をしたいというのであれば、失っても良いという余剰資金の範囲で投資することをオススメします。